Microsoftが、Anthropic、Nvidiaとインフラ提携し、OpenAI依存から「マルチAI戦略」へシフト

Microsoftは、生成AIインフラ強化に向けてAnthropicおよびNvidiaとの新たなクラウドインフラ提携を発表しました。この枠組みは、長年の中核パートナーであるOpenAIとの関係を維持しつつも、依存度を相対的に下げる「マルチAI戦略」への明確な一歩となります。今回の発表によると、ChatGPTの競合であるClaudeを開発するAnthropicは、MicrosoftのクラウドプラットフォームAzureから今後300億ドル相当のコンピューティングキャパシティを購入するコミットメントを行いました。同時に、NvidiaはAnthropicに最大100億ドルを、Microsoftもサンフランシスコ拠点の同社に最大50億ドルを投資する計画です。3社のCEOであるAnthropicのDario Amodei、MicrosoftのSatya Nadella、NvidiaのJensen Huangが、Microsoftの年次開発者会議「Ignite」開幕直前に共同発表しました。

Nadella氏はビデオ通話で、「今回の提携は、最高のインフラ、モデル選択肢、アプリケーションを顧客に届けるというコミットメントをさらに深めるものです」とコメントし、依然としてOpenAIとのパートナーシップは「クリティカル」であるとしつつも、AnthropicとNvidiaを巻き込んだ広いエコシステム構築に舵を切ったことを強調しました。

Microsoftは今年初めまでOpenAIの独占的なクラウドプロバイダーであり、ChatGPTの技術を自社AIアシスタント「Copilot」の基盤として採用してきました。しかしOpenAI側がOracleやSoftBank、その他のデータセンターデベロッパーや半導体メーカーと独自に大規模なクラウド契約を結び始めたことで、両社のビジネス関係は改定され、OpenAIは自前のクラウドキャパシティ確保に動き始めています。その一方で、MicrosoftはOpenAIが非営利から分離して立ち上げる営利法人に約27％出資しているとされ、資本面では強い関係を維持しています。

Anthropicは2021年に元OpenAI幹部らが設立したスタートアップで、今回の発表ではClaudeが「3大クラウド（Amazon、Google、Microsoft）すべてで利用可能な唯一の最先端モデル」になると説明しました。現在もAnthropicのプライマリクラウドはAmazonですが、Googleに加えMicrosoftとも深く連携することで、マルチクラウド前提のモデル提供体制を整えつつあります。生成AIモデルであるClaude、ChatGPT、Copilot、GoogleのGeminiなどは、多くの人の働き方を変えつつある一方で、開発・運用には膨大な電力と計算資源を必要とします。OpenAIもAnthropicもまだ黒字化は報告しておらず、投資規模に見合う収益成長が実現しなければ「AIバブル」への懸念も指摘されています。今回の取引の一環として、NvidiaはAnthropicに対し、自社のAI専用チップによる最大1ギガワット相当のコンピューティングキャパシティへのアクセスを提供する計画です。Huang氏は「AnthropicとDarioの仕事は以前から高く評価しており、今回が初めての本格的なパートナーシップになります。Claudeの成長を加速させたい」と述べました。

サンフランシスコで開幕したMicrosoftのIgniteでは、同社の最新AI技術が披露される中、AnthropicのChief Product OfficerでありInstagram共同創業者でもあるMike Kriegerがステージに登壇し、両社のパートナーシップを紹介しました。Krieger氏は、「当初から、両社には多くの“共通のDNA”があるように感じていました」と語り、クラウドとAIの両面で緊密に連携する意義を強調しました。この提携により、MicrosoftはOpenAI一辺倒だったAIスタックを再構成し、AnthropicやNvidiaを含む複数パートナーの技術を取り込むことで、Azure上でのモデル選択肢と計算インフラを一段と強化することになります。生成AIが今後も高い成長期待を維持できるかどうかは不透明な部分も残りますが、Microsoftはインフラとモデルの両面でオプションを広げることで、リスク分散と成長機会の最大化を図っていると言えます。

Anthropicについて
Anthropicは、2021年に元OpenAIのリーダー陣によって設立されたサンフランシスコ拠点のAIスタートアップです。安全性と信頼性を重視した大規模言語モデルの研究・開発に取り組み、ChatGPTの競合モデルであるClaudeシリーズを提供しています。Amazon、Google、Microsoftといった主要クラウドと提携することで、マルチクラウド環境に対応した提供体制を構築しつつあり、NvidiaやMicrosoftなどからの大型出資を背景に、次世代の「フロンティアモデル」開発と商用展開を加速しています。