Tabular AIのPrior Labs、1,000倍スケールで1,000万行を処理可能な世界初のエンタープライズ向け基盤モデルを発表

Tabular AIのパイオニアであるPrior Labsは、最大1,000万行のテーブルデータを1つの基盤モデルで扱える、世界初のエンタープライズ向けAIモデルを発表しました。わずか1年足らずで処理可能なデータセット規模を1,000倍に拡大したこのブレイクスルーにより、Prior Labsはエンタープライズ規模のTabular AI分野で明確なリーダーとしての地位を固めました。同社の基盤モデル「TabPFN」は、2025年1月にNature誌で発表されて以降、数億件のシンセティックデータセットで事前学習され、タスク固有の再学習なしにあらゆるテーブルデータから瞬時にパターンを学習できるよう設計されています。当初1万行規模からスタートしたTabPFNは、2025年11月初旬に10万行までスケールし、業界ベンチマークであるTabArenaで首位を獲得。さらに同月中に1,000万データポイントまで拡張したことで、あらゆるテーブルデータサイズに対応する事実上の標準モデルとなりつつあります。

表形式データは、財務記録、サプライチェーン、顧客データベースなど、多くのエンタープライズシステムの中枢を担う一方で、画像やテキストのように構造が似通っていないため、AIの進化が遅れてきた領域です。データセットごとに列構造も統計挙動も異なるため、医療データと金融取引データで同じ学習シグナルを使い回すことが難しいという課題がありました。Prior LabsのTabPFNは、この「パターンの少なさ」を克服するため、数億のシンセティックデータで多様な構造のテーブルを事前学習し、どのような業種・ドメインのテーブルデータであっても、事前のタスク専用チューニングなしでSOTA（最先端）性能を発揮できるよう設計されています。また、基盤モデルとして企業固有のデータでファインチューニング可能なため、導入するたびに精度と再現性が高まり、「使えば使うほどモデルが賢くなる」自己強化ループが生まれます。こうした能力が評価され、Hitachiや大手グローバル金融機関などフォーチュン500企業が、予知保全や流動性管理などミッションクリティカルな業務にTabPFNを採用しており、オープンソース版もMicrosoft、Amazon、Walmartのエンジニアチームを含むユーザーにより累計230万ダウンロードを突破しています。

Prior Labsは、研究力とプロダクション展開力を兼ね備えたチーム構成も強みとしています。共同創業者でCEOのProfessor Frank Hutter氏（AutoML分野の第一人者）と、Founding AdvisorのProfessor Bernhard Schölkopf氏（因果機械学習の世界的権威）を中心に、NeurIPS・ICML・ICLR 2025だけで20本超の論文を発表するなど、世界トップレベルの研究成果を上げています。共同創業者のNoah Hollmann氏（GoogleとBCG出身のコンピュータサイエンティスト、X-Prizeファイナリスト）とCOOのSauraj Gambhir氏（VC、M&A、グロースのエキスパート）も加わり、研究からエンタープライズ導入までを一気通貫で回す体制を構築しています。現在、TabPFNは金融・ヘルスケア・インダストリアル・エネルギーなど数千のユースケースで本番運用されており、一部では100以上の既存モデルを1つの基盤モデルに統合する事例も出ています。同社は次のステップとして、「What if」シナリオを扱う介入的推論や、領域知識を活かしたエージェント型推論の実装を進めており、これらの研究成果は12月のNeurIPSで公表される予定です。

Prior Labsについて
Prior Labsは、2024年にProfessor Frank Hutter氏、Noah Hollmann氏、Sauraj Gambhir氏によって設立された、次世代Tabular AIの開発をリードするスタートアップです。企業の意思決定を支える構造化データに特化したAIを誰もが扱えるものにすることをミッションとし、テーブルデータ向け基盤モデル「TabPFN」を中心に、研究・製品開発・エンタープライズ導入を展開しています。Balderton CapitalやXTX Ventures、さらにHugging Face、Google DeepMind、Black Forest Labs、Snyk、AtScale、Silo AIなどの著名AIリーダーから支援を受け、トレーディング、金融、医療、産業、エネルギー等の領域で、複雑かつ大規模な表形式データの解析・予測・意思決定支援を実現しています。