AI保険のNirvana、シリーズDで1億ドルを調達し商用自動車保険をデータ起点で再定義へ

AIネイティブの商用保険会社Nirvana Insuranceは、シリーズDの一部として1億ドルを先行的に調達したと発表しました。今回のラウンドはValor Equity Partnersが主導し、既存の主要投資家であるLightspeed Venture PartnersとGeneral Catalystも大きく追加出資したとしています。Nirvanaは2025年Q1のシリーズCから間もない期間で企業価値がほぼ2倍となり、評価額は15億ドルに到達したと述べています。調達資金は、保険業務の「AI駆動OS」を構築する取り組みを加速するとともに、テレマティクスと保険を組み合わせた同社独自のソリューションを現行プロダクトの枠を超えて拡張するために投じる方針です。

CEOのRushil Goel氏は、AIの価値は小さな改善ではなく産業を根本から作り替える機会だと述べ、NirvanaはAI時代にふさわしい保険として、データを中心に据え、数十億マイル規模の実走行データで学習したモデルと、引受、保険金支払い、サービスをスケールで再定義できるOSを構築していると説明しています。保険は、多変数の数理モデルを動的データに適用して価値を生む産業であり、AIによる再構築と相性が良いというのが同社の立場です。商用自動車保険は、RIMSのデータによれば米国における小売支出の約1％に相当する規模だとされ、特にトラック輸送は経済活動を支える基盤になっています。

Nirvanaの差別化の核は、フリートのテレマティクスデータをもとに、300億マイル超の走行データで学習した独自の予測モデルにあるとされています。これにより、引受、価格設定、保険金支払いをリアルタイムのインテリジェンスで最適化でき、顧客には最大20％の安全性ディスカウント、引受の高速化と引受担当の生産性向上、損害率のトップデシル水準、保険金支払いの満足度と解決スピードの向上といった成果につながるとしています。こうしたトップラインとボトムライン両面での効果が、急速な事業拡大と収益成長を後押しし、レガシー産業のAI転換を牽引するポジションにつながっていると説明しています。

Valor Equity PartnersのVivek Pattipati氏は、AI時代に生まれる「世代を代表する企業」は、データが豊富で非効率が残る巨大なレガシー産業の根本課題をAIで解く企業であり、Nirvanaはテレマティクスの独自データ、深い機械学習の専門性、引受と保険金支払いでの実行力を通じて、業界再定義に挑む存在だと述べています。背景として、商用自動車保険、とりわけトラック輸送業界では保険料の負担が経営を圧迫しており、コロナ禍の急増後の2年間で、多くの運送会社が過去10年を上回る規模で倒産したとされています。こうした状況は、過去平均ではなく客観的なテレマティクスデータに基づいてリスクを評価する保険者への需要を高めており、Nirvanaのアプローチが適合すると同社は主張しています。LightspeedのRaviraj Jain氏も、従来保険会社が不完全な情報でリスクを価格付けする一方で、Nirvanaは実走行データで学習したモデルにより市場を継続的に上回る損害率や迅速な保険金対応、スケールする引受生産性を実現していると述べています。

Nirvana Insuranceについて
Nirvana Insuranceは、リアルタイムのフリートおよびテレマティクスデータで保険をゼロから再構築することを目的に設立されたAIネイティブの商用保険会社です。米国の保険会社や物流オペレーターに対し、引受、保険金支払い、価格設定、フリートインテリジェンスを提供します。300億マイル超の実走行データを解析し、より安全なフリート運用、コスト低減、収益性の高い引受を支援するとしています。