Startup Portfolio
SOC運用の自律化と脅威相関分析を進めるセキュリティAIのQevlar AI、自律型セキュリティインテリジェンスを拡大
Qevlar AIは、自律型AI SOCプラットフォームを開発するParis発のスタートアップとして、PartechとForgepoint Capital Internationalが共同主導し、EQT Venturesも参加する$30Mの資金調達を実施しました。今回の調達は、サイバーセキュリティ業界が「AIに本当にセキュリティ判断を任せられるのか」という根本的な問いに直面する中で行われたものであり、Qevlar AIはその答えとして、自律型セキュリティインテリジェンスの実用化を進めています。同社は2023年1月にAhmed AchchakとHamza Sayahによって設立されました。両者はともに機械学習エンジニア出身であり、従来のセキュリティ業界内部からではなく、応用AIの視点からサイバーセキュリティの課題に取り組んでいます。Ahmed AchchakはÉcole Centrale Parisで数学とバイオテクノロジーを学んだ後、NatixisでSenior Machine Learning Engineerを務め、さらにMinautorのCTOとして技術基盤をゼロから構築し、売上を6倍に伸ばした経験を持ちます。Hamza SayahはEPFLで数学と応用数学を学び、ETH Zurichのスピンオフや、後にCircleCIに買収されたソフトウェアテスト企業Ponicodeで研究責任者を務めました。両者はHuawei Big Data Challenge Franceの受賞経験も共有しています。
Qevlar AIは、Meta、Hugging Face、Scalewayが支援するStation FのAIスタートアッププログラムにも参加し、短期間で実績を積み上げてきました。今回の$30M調達以前にも、EQT VenturesとForgepoint Capital主導の$14M調達を実施しており、累計調達額は$44Mに達しています。加えて、Orange Cyberdefense Best Partner Innovation Award、MSP Today Product of the Year 2025、Forum InCyber Growth Awardなどの評価も獲得しています。さらにHeadlineからは、AI分野を形作るトップ100サイバーセキュリティ企業の一社にも選ばれています。ただし、同社の価値は受賞歴よりも、実際に製品が機能しているかにあります。現在の顧客にはOrange Cyberdefense、Sodexo、MediaMarkt、Atos、GlobalConnectなどが含まれており、Europeと米国の両方で導入が進んでいます。こうした顧客基盤は、Qevlar AIの技術が実運用の現場で受け入れられていることを示しています。
Qevlar AIが特に重視しているのは、AIの一貫性の問題です。Ahmed Achchakは、大規模言語モデルは本質的に結果の一貫性に欠けると指摘しています。たとえば、同じログと同じメールを分析させても、ある時は悪意のあるフィッシングと判定し、別の時には異なる結論に至る可能性があるという問題です。1つの組織で10,000人を標的にしたフィッシング攻撃を想定すれば、その不安定さは無視できません。SOCでは日々膨大なアラートが発生しており、Forresterの分析ではたった3つの攻撃シナリオで数千件のアラートが発生し得るとされ、Gartnerは検知・対応サイクル時間の70%がトリアージと調査に費やされていると見積もっています。こうした状況に対して、AIを力任せに投入するだけでは不十分だとQevlar AIは考えています。同社のプラットフォームは、すべてを単一のLLMに流し込む構成ではなく、複数の専門AIシステムが協調するハイブリッド型アーキテクチャを採用しています。Ahmed Achchakによると、製品の一部にはBayesian modelingのような統計モデルや古典的機械学習を用い、中心には「Graph AI」と呼ぶ仕組みを据えています。これは顧客ごとの環境を動的オントロジーとして表現し、学習しながら理解を更新していくものです。これら複数のAIが協働することで、より高い一貫性、説明可能性、コスト制御を実現しているとしています。この構成はコスト面でも優位性を持ちます。LLMだけに依存するプラットフォームより運用コストを抑えられるだけでなく、顧客向け価格体系も、トークン単位や計算時間単位ではなく、「完了した調査件数ごと」という予測しやすいモデルに設定されています。Ahmed Achchakは、CISOが求めているのは年初の時点で年間コストを見通せる予測可能性であり、それがQevlar AIの価格設計の考え方だと説明しています。
また、同社は顧客導入時に「proof of value」方式を採用しています。顧客は競合製品や自社の既存プレイブックと比較しながらQevlar AIを評価した上で本格導入を判断できます。Ahmed Achchakによると、その結果は決定的であり、調査時間を10分の1に短縮し、3分程度まで圧縮できたうえ、24時間365日すべてのアラートを調査可能にしているとしています。今後の拡大先として、Qevlar AIは米国市場を強く意識しています。すでにFrance、Germany、UK、Sweden、米国で顧客を持ち、米国での事業拡大を進めています。一方でAhmed Achchakは、Europe発のサイバーセキュリティ企業としての課題も率直に認めています。成功するサイバーセキュリティ企業はこれまでIsraelか米国から出ることが多く、Qevlar AIにとって最大の課題は市場教育でも競争でもなく、人材採用だと述べています。現在52人規模の組織ですが、急速な成長を続けており、Europeのテック業界全体が抱えるタレントボトルネックの問題とも重なります。製品ビジョンとしては、単なるアラート調査ツールを超え、より戦略的なセキュリティインテリジェンス層へ進化することを目指しています。Ahmed Achchakは、多くのSOCが現在も、どれだけ多くのアラートに対処し、どれだけ早く閉じるかという「消防的」な発想で動いていると指摘しています。しかし、もしAIが組織内のすべてのシグナルを調査しているなら、6カ月前のアラートと今日のアラートを相関し、人間や従来型検知システムが見逃すパターンを見つけ出し、根本原因に迫れるはずだとしています。Qevlar AIは、火を消すだけでなく、その火事の原因を突き止め、再発を防ぐための知能基盤を築こうとしています。
Qevlar AIについて
Qevlar AIは、Parisを拠点とする自律型AI SOCプラットフォーム企業です。2023年にAhmed AchchakとHamza Sayahによって設立され、サイバーセキュリティ運用におけるアラート調査、相関分析、インシデント原因把握を自動化することを目指しています。大規模言語モデルだけに依存せず、Bayesian modeling、古典的機械学習、Graph AIを組み合わせたハイブリッド型アーキテクチャを採用し、高い一貫性と説明可能性を重視しています。累計$44Mを調達し、Europeと米国で事業拡大を進めています。
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