Startup Portfolio
動画生成AIのMoonvalley、ハリウッドの未来を左右するか
動画制作向けのAIツールを開発するトロント発のスタートアップMoonvalleyが、昨年11月に調達した7000万ドルのシードラウンドに続き、新たに5300万ドルを調達し、合計1億2300万ドルの資金を確保しました。米国証券取引委員会(SEC)の資料によれば、新たに14の匿名投資家が参加しているとのことです。
Moonvalleyは新たにロサンゼルスに拠点を開設し、ハリウッドのメジャースタジオに隣接するMack Sennettサウンドステージにて、アニメーション企業のAsteriaと共同でAI学習モデル「Marey」を開発中です。Mareyは、完全にライセンス済みかつ倫理的に収集されたデータだけを利用することを特徴とし、「映像およびメディア制作にこれまでにないパワーと柔軟性を提供する」としています。しかし、MoonvalleyはハリウッドにおけるAI活用の困難さも認識しています。動画生成AIをめぐっては、著作権を侵害するデータを利用したとしてクリエイターからの訴訟が相次いでいます。このためMoonvalleyは、事前に映像素材のライセンス契約や購入契約を行い、顧客がいつでも自分のデータを削除したり削除依頼できる仕組みを構築し、法的リスクを回避する戦略を取っています。
また、映画業界の労働組合であるハリウッドのアニメーションギルドは、AIの導入により米国内で10万人以上のアニメーションや映像関係者の雇用が2年以内に失われる可能性があるというレポートを2024年に発表しています。同組合が締結した現在の契約は2027年末に失効予定で、AIをめぐる労使対立は昨年のハリウッドのストライキを上回る規模となる可能性があります。MoonvalleyのMareyは、現在まだ開発中ですが、テキスト入力やスケッチ、写真、動画クリップを基に30秒程度のHD画質の動画を生成できる予定です。単体では短い動画ですが、これらをつなげることで長編映画の制作も視野に入れていると見られています。
Moonvalleyの倫理的なアプローチは業界の注目を集めていますが、他社も容易に模倣可能であり、将来的に競争優位性が損なわれる可能性も指摘されています。同社に参加した匿名投資家の中にハリウッドの大手スタジオやNetflixがいる場合、その支援はMoonvalleyの将来的な成功を左右する重要な要素になると見られています。
Moonvalleyについて
Moonvalleyは動画生成に特化したAI技術を開発するトロント発のスタートアップです。倫理的にライセンス取得したデータを利用することで、法的リスクを回避しつつ、ハリウッド映画産業における次世代の映像制作技術を目指しています。
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