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2025/12/01

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次世代の強化地熱システムのMazama Energy、世界最高温の強化地熱システムを実証 データセンター向けクリーンベースロード電源へ前進

Mazama Energy, Inc.は、米オレゴン州Newberryのパイロットサイトにおいて、坑底温度629°F(331℃)という世界最高温のEnhanced Geothermal System(EGS:強化地熱システム)の実証に成功したと発表しました。このブレイクスルーは地熱技術の新たなグローバルベンチマークとなるものであり、kWhあたり5セント未満の低コストでテラワット級のカーボンフリー・ベースロード電源を供給するという長期目標に向けた重要な一歩と位置づけられています。

 

生成AIや大規模データセンターの急拡大により、世界はこれまでにないレベルで「24時間365日、高密度で安定した電力」を必要としています。太陽光や風力といった従来の再生可能エネルギーは出力が変動しやすく、天然ガスや石炭は高い炭素負荷を伴います。Mazamaは300℃を超える高温地熱リソースを開発することで、天候や時間帯に左右されることなく、世界中ほぼあらゆる場所から24時間クリーン電力を供給できるポテンシャルを示しています。Mazama EnergyのCEOであるSriram Vasantharajanは、「地熱発電で得られるのは、世界規模で利用できる、カーボンフリーで価格も安定した、グリッドから自立可能な“真のベースロード電源”です」と述べており、特にハイパースケールデータセンターや産業電化に適したプラットフォームであることを強調しています。

 

Mazamaは今後、Newberryでの実証成果を踏まえ、商業規模プロジェクトへとフェーズを進めます。2026年には水平坑井を用いた15MWのパイロットを予定しており、その後Newberryで200MW規模の開発プロジェクトへスケールする計画です。また、温度400℃超の「SuperHot Rock領域」まで掘削を延長し、自社開発の高温材料、冷却ソリューション、刺激技術を活用することで、現行手法に比べて最大10倍の電力密度、75%少ない水使用量、80%少ない坑井数で同等の出力を得ることを目指しています。Mazamaは、こうしたSuperHot Geothermalの活用により、世界規模で競争力の高いディスパッチ可能な電力をテラワット単位で供給することを掲げています。

Newberryはカスケード山脈に位置し、米国最大級の地熱リザーバーの一つとされています。今回のデモサイトでは、Mazamaのエンジニアリングチームが既存の坑井を刺激し、水インジェクターとして機能させたうえで、新たに10,200フィート(約3,100m)の偏芯生産井を掘削しました。この2本の坑井は計画軌道から約6フィート以内という高精度で並行配置され、循環試験と診断結果から両者の間に高い接続性を持つ高温EGSリザーバーが形成されたことが確認されています。

 

技術実証では、以下のような成果が得られています。
・最大掘進速度100フィート/時
・花崗岩・玄武岩・花崗閃緑岩など多様な岩種を平均76フィート/時で掘削
・火山岩層で最大2,760フィートにおよぶビットラン(連続掘削距離)を達成
・モーターや測定ツールのダウンホール故障ゼロ
・超高温環境下における坑井健全性とセメントの安定性を確認

ユタ州FORGEプロジェクトでReservoir Management Leadを務めるDr. John McLennanは、「これは、わずかに偏芯した2本の坑井を接続し、代表的な作動流体を循環させるという統合開発プログラムの成功を示す重要な検証です」と述べ、「約50年前、ニューメキシコ州Fenton HillでLos Alamos National Laboratoryが始めた“フルスケールEGSリザーバー”構想の実現に向けたビジョンが、Newberryで形になりつつあると言えます。このコンセプト実証により、Newberryおよびそれ以外の地域で、さらに深く・さらに高温な機会への扉が開かれました」と評価しています。

 

今回の成功の中心にあるのが、Mazama独自の刺激技術であるThermal Lattice™です。これはEGS環境向けに特化して設計された特許プロセスであり、従来の水圧破砕(ハイドロフラクチャリング)技術を基盤としつつ、複雑なフラクチャーネットワークの形成と坑井間接続性の向上を可能にします。Newberryプロジェクトでは、架橋フラクチャリングフルード、スライディングスリーブ、化学・ナノトレーサー、ファイバオプティック診断なども活用し、リアルタイムでのフラクチャーマッピングや温度モニタリングに成功しました。Mazamaはこうした技術群を組み合わせることで、「より深く、より高温、より高出力」の地熱リソースの開放を目指しており、クリーンエネルギーの新たなフロンティアとしてSuperHot Geothermalを位置づけています。

 

Mazama Energyについて
Mazama Energy, Inc.は、次世代の強化地熱システム(EGS)とSuperHot Rock技術の開発を通じて、低コストでディスパッチ可能なカーボンフリー電力を世界規模で供給することを目指すクリーンエネルギーテクノロジー企業です。自社開発のThermal Lattice™刺激技術や高温材料・冷却ソリューションを用いた掘削・リザーバー構築により、従来の地熱発電の限界を超える高温・高出力リソースの活用を推進しています。オレゴン州Newberryでの世界最高温EGS実証を足がかりに、Mazamaは15MWパイロットや200MW開発プロジェクトを計画しており、将来的にはテラワット級のクリーンベースロード電源をデータセンターや産業電化向けに提供することを視野に入れています。地熱の「24時間365日・カーボンフリー・価格安定」という特性を最大限に引き出し、世界の電力システムの脱炭素化に貢献することをミッションとしています。

 

TagsCleanTechEnergyUnited States

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