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物理世界を理解する次世代AI基盤を開発する空間知能スタートアップのWorld Labs、世界モデルの3つのアプローチに注目集まる
物理世界を理解し、現実空間で安全かつ柔軟に動作できるAIを実現するため、業界では「世界モデル」への関心が急速に高まっています。従来の大規模言語モデルは、抽象的な知識処理には優れる一方で、現実世界の因果関係や物理的な結果を安定して予測することは苦手です。この制約を背景に、AIをロボティクス、自動運転、製造業などの物理空間へ広げる次の基盤として、世界モデルが新たな投資テーマになっています。2026年3月にはAMI Labsが$1.03Bのシード資金を調達し、その直前の2026年2月にはWorld Labsも$1Bの資金調達を発表しており、この領域への期待の大きさが表れています。世界モデルは一つの単一技術ではなく、複数の異なるアーキテクチャを含む広い概念として発展しています。現在、主な流れとしては、JEPA型、Gaussian splats型、そしてエンドツーエンド生成型の3つの方向性が注目されています。それぞれが、リアルタイム性、空間表現力、大規模生成能力といった異なる強みを持っており、用途に応じて棲み分けが進みつつあります。
JEPA型のアプローチは、現実世界をピクセル単位で再現するのではなく、潜在表現を学習することで本質的な因果関係を捉えようとするものです。この手法では、背景の細かなノイズや不要な視覚情報を捨て、物体の軌道や速度、相互作用といった重要な構造だけを扱います。そのため、計算効率やメモリ効率に優れ、低遅延が求められるロボティクスや自動運転のような用途に向いています。2026年3月に資金調達を公表したAMI Labsも、この方向性を重視していると報じられています。Gaussian splats型のアプローチは、画像やテキストなどの入力から、探索可能な3D空間そのものを生成することに強みがあります。これは、無数の数学的粒子を使って幾何形状や光の情報を表現する手法であり、単なる平面的な動画生成とは異なり、生成された空間を3Dエンジンへ持ち込み、任意の視点から移動や操作ができる点が特徴です。この方式は、即時応答が絶対条件となる用途には必ずしも向きませんが、空間コンピューティング、インタラクティブエンターテインメント、産業設計、ロボティクス向け訓練環境の構築などで大きな可能性を持っています。World Labsの主力製品であるMarbleは、この空間知能アプローチを商用化する代表例として位置づけられています。World LabsはMarbleを、画像、動画、テキストから高忠実度で持続的な3D世界を生成できる製品として紹介しています。
エンドツーエンド生成型のアプローチは、静的な3D空間を作るだけでなく、ユーザーの入力や行動に応じて、物理法則、照明、物体反応を含む環境全体をリアルタイムで生成し続ける方式です。このタイプでは、モデル自体が物理エンジンのような役割を担い、継続的にシーンを更新していきます。こうした構成は膨大な計算資源を必要としますが、ロボティクスや自動運転向けの大規模な合成データ生成や、インタラクティブな仮想環境の生成に非常に適しています。将来的には、現実世界で起こり得る稀で危険な状況を事前に学習させる基盤としての役割も期待されています。今後は、これらのアプローチが競合するだけでなく、相互補完的に組み合わされるハイブリッド構成も増えていくと考えられます。大規模言語モデルは引き続き推論やコミュニケーションの窓口として使われる一方で、世界モデルは物理空間や空間データを扱うための基盤インフラへと進化しつつあります。AIがWebブラウザの内側から現実世界へ出ていくためには、単に言葉を扱うだけでなく、空間、因果、行動結果を理解する能力が不可欠であり、世界モデルはその中核になる可能性があります。
World Labsについて
World Labsは、Fei-Fei Li、Justin Johnson、Christoph Lassner、Ben Mildenhallによって2024年に設立された米国のAIスタートアップです。機械に3D世界を人間のように知覚、生成、操作させる「空間知能」の実現を目指しており、大規模世界モデルの研究と製品化を進めています。主力製品のMarbleは、画像、動画、テキストから高忠実度で持続的な3D世界を生成する製品として展開されており、World Labsはゲーム、VFX、XR、ロボティクス、シミュレーション分野における空間知能AIの有力企業として注目を集めています。
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