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2025/12/10

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BioTechのAltos Labs、Arc Virtual Cell Challengeで「Generalist Prize」を受賞

Arc Instituteが主催し、Nvidia、10x Genomics、Ultima Genomicsがスポンサーを務めた初の「Virtual Cell Challenge」の結果がNeurIPS 2025の最終日に発表されました。遺伝子摂動に対する細胞応答をどれだけ正確に予測できるかを競うこの公開コンペでは、10万ドルのグランプリが2チームに授与され、そのうち新設された「Generalist Prize」をAltos Labsが受賞しました。Altos Labsは、2022年に30億ドルの資金で設立された営利バイオテックで、細胞のリジュビネーションを通じて細胞の健康とレジリエンスを回復することをミッションとしています。もうひとつのグランプリは、基盤モデルを抗体医薬や産業酵素など幅広い用途に展開するBioMap Researchが獲得しました。

 

Virtual Cell Challengeには、114カ国から5,000人以上が登録し、1,200超のチームが結果を提出、最終的に300超のチームが最終スコアを競いました。コンペの目的は、「病的な細胞状態をオフターゲット効果を最小限に抑えつつ“健康”な状態へとシフトさせる薬剤開発」を支援する“バーチャル細胞モデル”の標準ベンチマークを整備することです。タンパク質構造予測分野でAlphaFoldを生み出したCASPコンペの系譜を引く取り組みでありながら、細胞モデルは細胞型や遺伝的背景、コンテキストなど、より高次の生物学的複雑性を扱わねばならない点が大きなチャレンジとなっています。初期のスコアリングは、摂動効果を区別できるかを測るPDS、上昇・低下する遺伝子セットを正しく同定できるかを見るDES、トランスクリプトーム全体の遺伝子レベル予測誤差を測るMAEという3指標で構成されていましたが、コンペ中盤でMAEが最適化にあまり影響しなくなり、多くの上位チームがPDSとDESに注力する傾向が見られました。そこで運営側はスキーム自体は維持しつつ、ArcのSTATEモデル由来の4指標を追加し、計7指標に基づく「Generalist Prize」を新設。Altos Labsはこれら全指標の平均ランキングが最も高く、“単一スコアではなく最もバランスの取れたモデル”として表彰されました。

 

Altos Labsのチームは、従来の「平均応答」を扱うアプローチとは異なり、摂動に対する細胞応答の“分布”をシミュレートするflow matching生成モデルを構築しました。このモデルは、自社が開発したPerturBenchベンチマークで評価され、遺伝子間相互作用などの微細な発現パターンを捉えることに成功しました。学習には、チャレンジのトレーニングデータに加え、公開データベースやAltos Labsの内部摂動スクリーニングから統合した約700万個の高品質単一細胞データが用いられています。AltosのSenior Director of AI & MLであるRory Stark氏は、「勝つことよりも、バイオロジーのあらゆる側面を反映したモデルを目指した」と述べ、「全指標で良いパフォーマンスを狙うという“難しい選択”がGeneralist Prizeという形で報われた」と語りました。Research LeadのMarcel Nassar氏は、「優れたモデルを作るだけでなく、『生物学的妥当性をどうメトリクスに落とし込み、どう評価するか』が仮想細胞モデリングの核心課題だ」と指摘し、データを事前に見られないブラインド評価形式を採用したArcのチャレンジを高く評価しました。

 

ArcのCore InvestigatorであるHani Goodarzi氏は、「純粋なエンドツーエンドのニューラルネットワークが、事前知識を組み込んだハイブリッドモデルをまだ上回れないことは興味深い」とし、「単純にモデルサイズをスケールさせるだけでは結果は頭打ちであり、生物学的な事前知識の“賢い統合”が必要だ」と強調しました。また、上位チームの多くがタンパク質埋め込みなどマルチモーダルな特徴量を遺伝子発現データと組み合わせ、損失関数設計がアーキテクチャ選択と同じくらい重要であることも示されたと述べています。Arcは今後、このチャレンジを年次コンペとして継続する計画であり、参加チームが評価指標そのものを分析した論文も公表されており、次回以降の改善に直接生かされる予定です。

 

Altos Labsについて
Altos Labsは、細胞のリジュビネーションを通じて細胞の健康とレジリエンスを回復させることを目指すバイオテック企業で、2022年に約30億ドルの資金で設立されました。再生医学・老化研究・機械学習のトップ研究者が多数参加しており、最先端の細胞生物学とAIを組み合わせることで、加齢や疾患で失われた細胞機能を修復しうる新しい治療法の開発を進めています。

 

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