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InsurTechのFunctional Finance、保険の「血流」である請求・決済を自動化するファイナンスエンジンを提供
保険は本質的に金融商品です。今日集める保険料が、将来発生する保険金支払いを支えています。その裏側では、保険料の請求・入金、代理店やパートナーへの支払い、残高の消し込みといった日々のファイナンス業務が確実に回っていることが不可欠です。多くの加入者にとって、請求書は唯一の接点であり、請求内容が正確で支払いが簡単であれば信頼は深まり、誤りやわかりにくさがあれば信頼は簡単に損なわれます。同じことはエージェントやホールセラー、キャパシティプロバイダーにも当てはまり、支払いの遅延や不整合は、販売チャネルや再保険キャパシティが他社に移ってしまう直接の引き金になります。それほど重要でありながら、多くの保険会社・MGAのファイナンス業務は今なおスプレッドシートと手作業に依存しており、86%の支払いに人手による介入が必要であること、1件あたりの支払い処理コストが平均18ドルにのぼること、ブローカー経由で年間6億枚もの紙のチェックが処理されていることなど、非効率は深刻です。こうした手作業は単なる小さなムダではなく、顧客離脱、代理店からの信頼失墜、規制リスク、キャパシティ縮小といった構造的なリスクを生んでいます。
背景には、保険会社のコアシステムであるPolicy Administration System(PAS)が、商品設計や保険料計算、契約の変更・解約といった機能までは担う一方で、「お金の動き」には対応しきれていない構造的ギャップがあります。多くの場合、契約が成立した後の請求・入金・消込・コミッション支払い・トレジャリーレポートなどはPASの外側でスプレッドシートやメールに頼って運用されており、アンダーライティングがモダナイズされてもファイナンスは旧態依然というケースがほとんどです。Functional Financeは、まさにこのギャップを埋めるために設計された「保険のためのマネームーブメント・エンジン」です。
Functional Financeのプラットフォームは、保険ファイナンスに必要な五つの中核機能をカバーしています。まず請求・インボイス機能では、ダイレクトビルやエージェンシービル、分割払い、プレミアムファイナンスといった主要な請求モデルに対応し、月次・四半期・年次など柔軟な請求サイクルや、契約前入金・契約後入金、使用量連動型、複雑な返金・解約ルールを持つバンドル商品までサポートします。被保険者、エージェント、ホールセラーごとに最適化されたリマインド、領収、解約警告などの通知も組み込まれており、延滞の削減とコンプライアンス強化につながります。決済・チェックアウトでは、ブランド付きのホスト型チェックアウトページ、埋め込み型決済ライブラリ、ブランド付き支払いフォームなど複数の受け皿を用意し、クレジットカード・デビットカード・プリペイドカード・ACHに対応しています。各ポリシーごとにリアルタイムの元帳を持つことで、「本当に未払いの場合」にのみPAS側で解約トリガーを発火できる、クリーンな連携を実現しています。時間を最も奪う現場作業であるキャッシュアプリケーション(入金消込)については、Functional Finance経由で回収された支払いを自動的に契約へ紐づけ、送金明細ファイルも自動取り込み・照合し、例外のみを人が確認する形にすることで、従来数日かかっていた作業をリアルタイム処理へと変えます。
ディストリビューションパートナーへの支払いについても、単純なコミッション計算にとどまらず、「Distribution Partner Payables」という概念で、手数料やインセンティブ、複数の支払いロジックを包含した設計を採用しています。元受・収納ベースの支払い、前払いや分割スケジュール、コミッションとフィーの組み合わせなどに柔軟に対応し、リアルタイムの発生計上、最新の取引明細、パートナー口座への直接振込まで自動化します。さらに、トレジャリーマネジメントやキャリア・再保険者への支払残高、ディストリビューションパートナーへの債務残高など、すべての資金の流れをポリシーイベントに遡及できる粒度で可視化し、GL連携可能なレポートを即時に提供します。こうした自動化の価値は、MGAsやキャリアが複数州・複数商品にわたってプログラムを拡大し、請求ルールやコミッション体系、レポーティング要件が複雑化するなかで、ますます高まっています。フロンティングキャリアや再保険者も、サポート提供の前提として精緻でリアルタイムなレポーティングを求めるようになっており、請求・決済のモダナイゼーションはもはや「いつかやるべきこと」ではなく、事業継続の前提条件になりつつあります。
Functional Financeは、ジェネラルレジャーや税計算、銀行機能など「何でも屋」を目指すのではなく、「保険におけるお金の動きの自動化」に特化しています。資金の回収、自動消込、パートナー支払い、リアルタイムレポーティングを一つのエンジンで実現し、自社でバックオフィスを大きく拡張したくない会社には、同社のツールを用いたBPOサービスも提供しています。導入企業からは、「全て手作業だったFinOpsがリアルタイムで信頼できる仕組みに変わった」「100%のコンフィギュラビリティと最新技術の活用が決め手だった」といった声が寄せられており、請求遅延によるプロデューサーの不信や、顧客の離脱、キャパシティプロバイダーの再考といった連鎖リスクを抑え、スケーラブルな成長の土台として機能し始めています。
Functional Financeについて
Functional Financeは、MGAや保険キャリア向けに特化した請求・決済エンジンを提供するInsurTechスタートアップです。既存のPolicy Administration Systemと連携し、保険料の請求・回収、入金消込、ディストリビューションパートナーへの支払い、トレジャリーレポーティングなど、保険ビジネスにおける「お金の動き」をエンドツーエンドで自動化します。スプレッドシートとメールに依存した旧来の手作業プロセスを置き換えることで、調整作業の負荷を無くし、販売チャネルとキャパシティの信頼を守りながら、保険会社・MGAの成長余地を解き放つことを目指して事業を展開している企業です。
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