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FoodTech代替乳のRemilk、Gad Dairiesと組んでイスラエルで「New Milk」発売 2026年の米国進出を狙う
精密発酵で乳たんぱく質をつくるFoodTechスタートアップRemilkが、イスラエル大手乳業ディストリビューターGad Dairiesと提携し、新製品「New Milk」を自国イスラエルでローンチすると発表しました。Remilkは過去約5年間で1億5,000万ドルを調達し、酵母を用いたリコンビナントプロテインの開発を進めてきましたが、今回の発表でようやく消費者向け完成品として本格展開に踏み切るかたちです。同社は2026年の米国市場参入も視野に入れています。New Milkは、精密発酵によって生産された乳清たんぱく(β-ラクトグロブリン)をベースにした牛乳代替飲料で、通常の牛乳と比べて糖分を75%カットした処方になっています。製造自体はスペインの委託製造先で行い、まずはカフェやコーヒーショップ向けの業務用チャネルに供給し、その後、年内に小売チャネルへも展開する計画です。
RemilkのCEOであるAvi Wolffによると、New Milkは酵母と精密発酵技術を用いてβ-ラクトグロブリンという主要な乳清たんぱくを生産し、それを自社で配合・製品化した「ボトル入りのミルク」として販売されます。同社はすでに数千ガロン分の製品をカフェやレストラン、消費者向けにテスト供給しており、商業規模での生産が始まっています。Remilkは当初、CPG向けに原料たんぱく質を供給するB2B企業としてスタートし、General Millsなど大手と共同でパイロット製品を開発してきました。しかしWolff氏は、「プロテインという一部分だけを渡しても、“おいしい乳製品”に仕上げるには非常に高度なイノベーションとスキルが必要だと気づいた」と述べています。そのため、同社はたんぱく質の生産から最終製品の開発までバリューチェーン全体を自社で担う方向に舵を切り、この6年間で製品フォーミュレーションの研究開発を進めてきました。
一方で、純粋なB2Cモデルでブランド立ち上げから流通までを自前で構築するのは時間もコストもかかると判断し、イスラエルの大手乳業企業Gad Dairiesとの合弁という形を採用しました。RemilkとGadは共同で新会社を設立し、Gadが流通・販売・ロジスティクスを担い、Remilkがたんぱく質生産と最終製品の製造を担当します。つまり、Remilkが完成品を製造し、それをGadが保管・配送・販売する役割分担です。両社はそれぞれ独自のKPIと目標を持ちつつ、価値提供の異なる部分を担当することで、スピーディな市場展開を狙っています。Remilkが次のターゲットとして北米市場を見据える背景には、欧州におけるGMO(遺伝子組換え)への強い抵抗感があります。Wolff氏は、北米を次の重点市場とする主な理由として「ヨーロッパの反GMOスタンス」を挙げており、規制面や消費者受容性の観点から、先に米国での展開を図る戦略です。2026年には米国でも同様のパートナーシップモデルを組成し、市場投入することを目指すとしています。
同じく精密発酵由来の乳製品を手がけるPerfect Dayなどとの差別化について、Wolff氏は「決め手は小さなブレークスルーの積み重ねにある」と説明します。単にたんぱく質に水と脂質を混ぜただけでは、味も機能性も“本物の牛乳”にはなりません。コーヒーに入れたときの挙動も異なります。そのため、Remilkは機能性の向上、風味や香りの設計などに徹底的に取り組み、プロテインを「牛乳として機能する」レベルまで作り込んできたといいます。同社には約100名の従業員がおり、その7割は生物学や化学のPhDを持つサイエンティストで、たんぱく質や風味、乳そのものの構造を深く研究し、「特有の匂いと味」を再現することに注力してきました。大手CPGとの共同開発では、2年にわたる取り組みもあったものの、最終的な製品がRemilkの求めるクオリティに達しなかったとWolff氏は振り返ります。その理由として、既存のCPG企業のR&Dセンターが持つスキルセットと、「単一のたんぱく質から乳製品を再構築する」ために必要なスキルセットが大きく異なる点を挙げています。こうした経験から、同社は自社主導で製品開発まで担う現在のモデルに移行したといいます。
今後のタイムラインとしては、今後6〜9カ月はイスラエル市場での成功に集中し、その間にWolff氏を含む少人数のチームが米国でのパートナー候補との交渉を本格化させる予定です。多くのオペレーションは引き続きイスラエルに置きつつ、2026年の米国ローンチに向けた合弁スキームの構築を進める計画です。
Remilkについて
Remilkは、酵母と精密発酵技術を用いて乳たんぱく質(特に乳清たんぱくβ-ラクトグロブリン)を生産するFoodTechスタートアップです。従来の酪農に頼らず、発酵プロセスによって動物由来と同等の機能を持つたんぱく質をつくり、環境負荷の低い乳製品代替の実現を目指しています。当初はCPG向けの原料供給を行っていましたが、現在はたんぱく質生産から最終製品の開発までバリューチェーン全体を自社で手がけ、Gad Dairiesとのパートナーシップのもとイスラエル市場で「New Milk」をローンチしました。1億5,000万ドル以上の資金調達と100名規模のサイエンス主導チームを背景に、2026年の米国市場参入に向けて準備を進めています。
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