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2025/11/17

Startup Portfolio

AIミーティングアシスタントのCluely、バイラルマーケティングと持続的成長のリアル

Cluelyの創業者であるRoy Liは、スタートアップにとってソーシャルメディアでのバイラルな拡散はもっと真剣に取り組むべきテーマだと考えている一方で、「注目」や「バズ」だけでは長期的な成長は続かないと冷静に見ています。先週のTechCrunch Disrupt 2025のステージで、Liは「とても完成度の高いものを出そうとしたわけではなく、ギリギリ動くものを世に出して、十分な数のアーリーなユーザーが使ってくれれば、そこからユースケースが見えてくるはずだと考えていました」と振り返り、「今思えば、少し早くローンチしすぎたかもしれません」と語りました。Cluelyがテック業界で話題になったのは4月のことです。「すべてを出し抜く(outsmart everything)」という挑発的なコピーと共に、攻めたマーケティングで一気に注目を集めました。Liは、Columbia University在学中にテクニカルポジションの面接でこのツールを使ったことが発覚し、退学処分になったことで知られるようになりましたが、その「アウトロー」的な評判を逆手に取り、オンライン上の会話の中で従来とは異なる形で情報を提示し、「何でも出し抜ける」とうたうスタートアップとしてCluelyを打ち出してきました。

 

6月末には、営業電話、カスタマーサポート、リモートトレーニングなど複数の用途に使えるエンタープライズ向け製品も発表し、「マルチユースなAIコラボレーションツール」としての顔も見せました。しかし今週、Cluelyは大胆なピボットに踏み切り、「AI Meeting Assistant」と題した新コンセプトのサイトをローンチしました。現在は、「会議中のメモをAIが自動で取り、その後のフォローアップメールまで自動化する、最高のAIノートテイキングアシスタント」を目指すプロダクトとして方向性を定め直しており、ユーザーの会議体験全体をサポートすることに重点を置いています。Liは「想定よりはうまくいっていますが、史上最速で成長している会社というわけではありません」と現状を冷静に語っています。

こうした話題性は、資金調達にもつながりました。6月にはAndreessen Horowitz(a16z)から1,500万ドルのシリーズA調達を実現しました。同月、a16zのパートナーであるBryan Kimはポッドキャストで、「Roy Liは、注目を集めるだけでなく、それを支払う顧客に変える方法をよく理解している」と投資の理由を語っています。夏のプロダクト発表後には、Liが「ARRが1週間で3百万ドルから7百万ドルに伸びた」と公の場で自慢したことも話題になりました。当時Liは、「会議や面接がある人は全員これを試しています」と胸を張っていました。

しかし、その4カ月後、Liは公の場で数字を語ることには慎重になっています。「学んだことのひとつは、売上やARRを公に開示すべきではないということです。うまくいっているときは誰も気にしませんが、調子が悪くなった途端、その数字だけが一人歩きしてしまいます」と語り、過度な数字アピールのリスクを認めています。AIブームのピークの中で、多くの急成長AIスタートアップの創業者がARRを積極的に公開し、勢いをアピールしているのとは対照的な姿勢です。

 

Cluelyのこれまでの軌跡は、ソーシャルメディアでの話題性がどれほど高くても、プロダクトがユーザーに十分な価値とスムーズな体験を提供できなければ、その注目は長続きしないことを示しています。初期のバズ、話題性のある創業者ストーリー、大型VCからの資金調達、急激に伸びたARRといった派手なトピックスがあっても、最終的に残るのは「ユーザーが日々の仕事の中で本当に使い続けるかどうか」という一点に尽きます。Cluelyのケースからスタートアップが学べる教訓は、バイラルマーケティングと堅実なプロダクト価値のバランスこそが持続的成長の鍵だということです。注目を集めることは成長のきっかけになりますが、その後も成長を続けられるかどうかは、どれだけ現実の課題を解決し、継続的にマネタイズできるプロダクトを作れるかにかかっているのです。

 

Cluelyについて
Cluelyは、Roy Liが創業したAIスタートアップで、オンライン上の会話やミーティングにおける情報提示やノートテイキングを高度に自動化するツールを開発している企業です。初期には「outsmart everything」というコンセプトを掲げ、会話の文脈に応じて情報を提示するインタラクティブツールとして注目を集めましたが、現在は「AI Meeting Assistant」として、会議中の自動メモ作成と会議後のフォローアップメール送信に特化したAIノートテイキングアシスタントへとピボットしています。Andreessen Horowitzなどから資金調達を行い、AIを活用してナレッジワークを効率化する次世代のワークツールを目指して事業を展開しています。

 

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