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SAPがフランスAIエコシステムMistral AIと戦略的連携し、「欧州主権デジタル基盤」構築を加速
SAP SEは、フランスのAIセクターと新たな協業を開始し、Bleu、Capgemini、Mistral AIとの新規および拡張パートナーシップを発表しました。SAPのエンタープライズアプリケーションの知見と、フランスのダイナミックなAIエコシステムを組み合わせることで、データと知的財産を保護しながら、欧州のデジタルトランスフォーメーションを前進させる「主権クラウド」型のAIソリューションを構築する狙いです。この発表は、ベルリンで開催された「欧州デジタル主権サミット」において行われ、フランスとドイツが欧州のイノベーションと競争力強化を再確認する場ともなりました。
SAPのCEOであるChristian Kleinは、「ヨーロッパの競争力は、完全なデジタル主権を維持しながら技術的卓越性とイノベーションを両立できるかどうかにかかっています。世界トップクラスのフランスAIエコシステムと力を合わせることで、オープンなイノベーション、厳格なデータ保護、人と社会の進歩に奉仕するテクノロジーという“三本柱”を備えた信頼できるデジタル基盤を欧州に築いていきます」とコメントしています。中核となるのが、BleuとDelos Cloudによる仏独連携です。不安定な地政学的環境を背景に、両社は欧州のデジタルインフラを守る強固な枠組みとして相互支援コミットメントを締結しました。軍事衝突や大規模サイバー攻撃といった危機的状況を想定した技術・オペレーション面での協力体制を整え、早期検知・分析・防御・復旧までを国境を越えて連携できるようにすることで、欧州のレジリエンスとデジタル主権を高めることを目指しています。
SAPとCapgeminiも戦略的パートナーシップを一段と強化し、サイバーセキュリティの向上と主権クラウド上のエージェンティックAIによるエンタープライズ変革を欧州全域で加速させます。仏独産業アライアンスの一環として、両社は協力協定に署名し、「Sovereign Technology Partnership」を立ち上げます。これにより、欧州の企業や公共部門、規制産業は、データマネジメントやクラウド移行サービスから、クラウドインフラ、オートメーション、エージェンティックAIまで一連のソリューションにアクセスできるようになります。高い信頼性とコンプライアンス、レジリエンスを兼ね備えた新たなデジタルインフラのベンチマークを提示することで、欧州の組織が「安全かつ自律的に」イノベーションを推進できる環境づくりを後押しします。
さらに、SAPとMistral AIは戦略的パートナーシップの拡大を発表し、人工知能分野における欧州の技術的主権を強化する「欧州初のフルスタック主権AI」を打ち出しました。具体的には、SAP Business Technology Platform(SAP BTP)上のSovereign AI Foundationに、Mistral AIのフロンティアモデルや対話型サービス「Le Chat」を統合し、欧州域内の主権AIデータセンター上で動作するエンタープライズ向けクラウドソリューションとして提供します。Mistral AI StudioもSAPのAI Foundationに組み込まれ、顧客やパートナーは自社環境内で主権クラウドアプリケーションやAIエージェントをセキュアかつコンプライアンスに沿ってスケール展開できるようになります。両社は今後、産業ごとに特化したAIアプリケーションの共同開発も進めていきます。SAPのエンタープライズ技術とMistral AIのAI専門性を組み合わせ、エンジニアリングやR&D領域の複雑な課題を解決し、新たな事業価値の創出を狙います。SAP BTPのAI Foundationは、事実上あらゆるインフラ上でSAP Business AIを統合レイヤーとして提供できる構造となっており、Mistral AIとSAPは、ハードウェアからプラットフォーム、アプリケーション、ユーザーインターフェースに至るまで、欧州向けにスケーラブルかつコンプライアンス準拠のAIソリューションを共に構築する「主権AIの土台」を形成しつつあります。まずはドイツから、公共サービスや規制産業向けの「ソブリンピラー(主権レイヤー)」を展開し、他国・他業種への拡張も視野に入れています。
これらの取り組みは、SAPが掲げる「SAP Sovereign Cloud」戦略の重要なピースであり、欧州のデジタル主権を強化しつつAIのポテンシャルを最大限に引き出すための基盤づくりです。SAPは欧州の主権クラウドとAIソリューションに対し、現地データセンターでのSAP Cloud Infrastructureサービス展開とあわせて、累計200億ユーロ超の投資を計画しています。厳格なガバナンスとコンプライアンスのもとでデータと資産の主権を維持しながら、世界有数のテクノロジーを「欧州のルール」に沿って活用できるようにすることで、政府・公共機関・企業が欧州の管理下で利用できるレジリエントなデジタル基盤を構築することが狙いです。
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