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音声合成のElevenLabs、ハリウッドスターの声を集めた「Iconic Voice Marketplace」でエンタメ業界に波紋
音声クローン技術を手がけるスタートアップElevenLabsが、ハリウッド俳優のMatthew McConaugheyとMichael Caineと契約を結び、AI生成版の「声」を商業利用できるようにしたことが明らかになりました。同社は先月開催した初のサミットで、両者との提携とともに新プラットフォーム「Iconic Voice Marketplace」を正式発表し、米エンタメ業界に大きなインパクトを与えています。
ニューヨーク拠点のElevenLabsが立ち上げたIconic Voice Marketplaceは、企業が著名人の声の利用をリクエストできる二者間プラットフォームです。利用申請は一律の「使い放題」ではなく、ブランドや著作権(肖像権)を管理する権利者との個別合意を前提とする仕組みで、マッチング後にElevenLabsの技術でコラボレーションやライセンス契約を具体化します。ElevenLabsは2022年創業のスタートアップで、ブランドライセンスとレガシーマネジメントを手がけるCMG Worldwideなどと提携し、故人を含む「レジェンド級の声」をマーケットプレイスに集めています。Michael Caineの声はElevenReaderアプリおよび新マーケットプレイスで利用可能になり、John Wayne、Liza Minnelli、Laurence Olivierら25以上のアイコニックな声がラインナップされているといいます。
長年ElevenLabsに出資してきたというMcConaugheyは、今回の契約を通じて、自身のニュースレター「Lyrics of Livin’」のスペイン語版オーディオエディションを、クローン音声を使って展開する計画です。「自分の声でストーリーやアイデアを届ける場として始めた」と語るMcConaugheyは、「ボイステクノロジーに取り組む全ての人に、“続けてほしい”と伝えたい。スクリーンから顔を上げて、人間にとって最も古くからある表現手段—声—を通じてつながれる未来をつくっている」とコメントしました。一方Caineは、「ElevenLabsは人間性を置き換えるためではなく、称えるためにイノベーションを使っている。声を奪うのではなく、増幅し、新たなストーリーテラーに扉を開くものだ」と述べ、技術へのポジティブな姿勢を示しています。
ElevenLabsは当初、映画・オーディオブック・ゲームの多言語吹き替えにおいて、話し手の声と感情を保ったまま音声を差し替える用途の技術として開発されました。しかし2022年の一般公開直後から、「増加する不正利用」の一部事例を自ら認め、2023年1月には有料ユーザーへの機能制限など追加のセーフガードを約束しています。にもかかわらず翌年には、デジタルコンサルタントがElevenLabsのソフトウェアを使って当時の米大統領Joe Bidenの声を模倣したロボコールを数千人のニューハンプシャー州有権者に送信する事件も報じられました。CEOのMati Staniszewski氏は、「このマーケットプレイスは、スタジオとタレント双方に新しい機会をもたらしながら、ストーリーテリングを拡張する責任あるAI利用のモデルケースだ」と強調していますが、ハリウッドを揺るがす新サービスであると同時に、ボイスクローン技術のガバナンスをめぐる議論も一層過熱しそうです。
ElevenLabsについて
ElevenLabsは2022年に創業された米ニューヨーク拠点のスタートアップで、高品質な音声合成・音声クローン技術を開発しています。テキストや音声から自然で感情豊かな音声を生成することができ、映画やゲーム、オーディオブック、ローカライズ、アクセシビリティなど幅広い用途に活用されています。最新の「Iconic Voice Marketplace」を通じて、著名人やレガシーアーティストの声を権利者と連携しながら提供する一方、不正利用への対策として機能制限や安全対策の強化にも取り組んでいます。
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