BioオートメーションのExcelsior Sciences、AI駆動ドラッグディスカバリーを加速

Excelsior Sciencesは、米国内におけるスモールモレキュール（低分子医薬品）の創薬・製造の高速化を目的とした自動化ケミストリープラットフォームの拡張に向け、総額9,500万ドルの資金調達を実施したと発表しました。内訳は、Deerfield Management、Khosla Ventures、Sofinnova Partnersが共同リードした7,000万ドルのシリーズAラウンドに加え、ニューヨーク州の経済開発機関Empire State Developmentによる2,500万ドルの助成金です。このほか、Cornucopian Capital、Eli Lilly and Company、Illinois Ventures、MITなども投資に参加しています。

同社は、創薬プロセスを「マシンで実行可能な化学」に変換し、設計・合成・評価が一体となったクローズドループ型のドラッグディスカバリーを実現することを目指しています。中核技術である「smart blocc」は、AIが新規化合物を生成・解析するためのモジュール式ケミカル言語として機能し、創薬および製造環境における化合物探索の自動化とスケールを可能にします。製薬業界では、重要な薬剤の開発・生産拠点を国内に回帰させる「リショアリング」の圧力が高まっており、Excelsior Sciencesは、職人技に依存した従来型の合成化学に代わるスケーラブルな選択肢として、自動合成とAIワークフローを統合したプラットフォームを提供しようとしています。

今回の資金は、プラットフォーム機能の拡充、自社パイプラインの強化、創薬だけでなく材料科学など他分野でのパートナーシップ推進に充てられます。Excelsior SciencesはDeerfield Management内のベンチャービルドから生まれ、ニューヨーク市のCure Innovation Campus内の専用ラボ施設を拠点としています。共同創業者には、CEOのMichael Foley氏（PhD）、Marty Burke氏（MD, PhD）、Bartosz Grzybowski氏（PhD）、Jana Jensen氏（PhD, MBA）らが名を連ね、AIと合成化学を融合した統合システムを構築することで、AI時代のケミストリー領域における「基盤インフラ」の確立を目指しています。また、国内の重要な医薬品原料のサプライチェーン強化という国家的な課題とも方向性を共有しており、オフショア製造への依存度を下げるためのツールとプロセスを整備することも重要なミッションと位置づけています。

CEOのMichael Foley氏は、「西側諸国の創薬と製造は岐路に立っています。競争力を維持するには、より良い薬を、より早く生み出さなければならない。そのためには、精製済みの化合物を高速に合成し、複数アッセイで同時に評価できる自動合成プラットフォームが不可欠であり、そこから初めてAIが従来のタイムラインを“何年も短縮できるだけの豊かなデータ”が得られる」と述べ、smart bloccsが創薬スケールと製造スケールをシームレスに結ぶ初のプラットフォームであると強調しました。投資家からも「AI時代のケミストリーの“最後のピース”」「理論上のAI設計を現実の分子と薬に橋渡しする存在」と高く評価されており、米国のライフサイエンス拠点としてのニューヨークのプレゼンス強化にも寄与すると期待されています。

Excelsior Sciencesについて
Excelsior Sciencesは、AIと自動化ケミストリーを組み合わせて、スモールモレキュール医薬品の創薬・製造プロセスを再構築することを目指すバイオテック企業です。モジュール式のケミカル言語「smart blocc」と自動合成プラットフォームを活用し、設計・合成・評価のクローズドループを実現することで、AI設計分子の現実世界での実装を加速します。ニューヨーク市のCure Innovation Campus内にラボを構え、Deerfield Management、Khosla Ventures、Sofinnova Partnersなど一流投資家の支援を受けながら、創薬・材料科学・国内サプライチェーン強化など幅広い応用領域への展開を進めています。